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「ああ。あいつらはコロニー単位で行動し、その中心にいつも長がいる。瑠璃姫と茜の二体がここ百数十年で活動確認されているんやが、その長が休眠と活動を繰り返す。
この休眠はおそらく繁殖のために必要な身体機能の調整に必要なんやといわれとるんやけど、その休眠期は長以外の姑獲鳥が長を守るために自由に動けなくなるんや。
せやけど長ーー始祖と呼ぶがーーが休眠から覚めようとする時期、長以外の姑獲鳥の活動制限が徐々に解かれていく。
その期間に姑獲鳥は人間社会に入り込み、始祖の生活環境を整える。
本来ならそのためだけの期間なんやけど、最近――特に瑠璃姫のコロニーはこの時期を人間社会をかき回すのに使っとる。
プロパガンダやらなんやら使うて、国や民族を煽って戦争の火種を作り始めるんや。
もちろん、姑獲鳥がなんもせんでも人間いうんは馬鹿げた戦争を行うもんやけど、姑獲鳥が関与すると事が大きくなる――。」
「あの、ちょっと聞いてもいいですか?」
早苗さんが口を挟んだ。僕を含め4人の視線が一斉に早苗さんに向き、彼女がびくっとするのが分かった。
だがひるまず言葉を続ける。
「その姑獲鳥っていうのは、人間に似てるんですよね?」
「人間に化けれるというのが正しい言い方だろうな。だからこそ実際にいる人間を殺してなり替わることも可能だ。」
「それで、人間を餌にしてると。」
「ああ。」
「じゃあ、なんで戦争なんて起こすんです?そんな事したら餌が死んじゃうじゃないですか。」
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