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神ーー。
人を襲う生き物が、神?
なんだかピンと来ないでいる僕の耳元で、誰かが囁く。
ーー神殺しめ。おのれ、許さぬ。
その声に、反射的に顔を上げる。しかし声の主はどこにもいない。空耳?
いいや、あの声。どこかで聞いたことがある。どこだったろうか。
「どうした?高天。」
「いいえ、なんか空耳です。気にしないで下さい。」
「そうか?大丈夫かよ。」
爽矢さんが心配そうにこちらを覗き込む。
それを爺様が遮った。
「そう大げさにするな。お前、強面なんやさかい。」
「生まれつきだよ、仕様がない。」
「いやいや。中身がでてきてるんやて。先々代の時もあんた怖い顔やったで。」
「けっ。」
二人の掛け合いに苦笑が漏れる。口角を上げて二人を止めつつ、僕は頭の中であの声をどこで聞いたのだっけと思い起こしていた。ただ不思議なことに、思い出そう思い出そうとすればするほど、どんな声だったのか、女の人のものか男の人のものなのかもわからなくなっていった。
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