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ちなみに僕はここのすぐ近くにある今井食堂の鯖煮が好きだ。幼少期、爺様はよく僕を上賀茂神社に連れて行ってくれた。
僕がそれを嫌がると、今井食堂の鯖煮で釣って連れ出していた。
懐かしいものだ。
最近食べていないけど、味は変わりないだろうか。
今日の帰りが遅くならなければ、買って帰ろう。
ぼんやり考え事をしていると後ろから声がかかる。
「おお、早いなあ。お前ら。」
「爽矢さん。」
「ちわっす。」
紺色の袴姿に、羽織りを羽織った爽矢さんがそこに立っていた。彼はきょろきょろあたりを見回し、
「早苗は?」
「来てないです。部活だって。」
「先週大会だったのに?忙しいねえ。」
そういいながら頸の後ろを軽く掻いた。
「まあいい。行こう。」
「どこに?というか爽矢さん、その恰好…。」
「うん?ああ、一応九頭龍としての正装できたんだ。」
正装――。そんな大層なものなのか?というか神薙家からここまでこの格好できたのか?
「一応言っとくが、社務所で着替えさせてもらったからな。」
「心を読まないでくださいよ。」
「いや、顔に出てるから。」
爽矢さんは息をひとつ吐いた。
そして封印について説明をしてくれる
「この封じの儀は、京都洛中を守るために四方に施されている。」
「四方?東西南北ってことですか?」
僕が尋ねると爽矢さんは頷いた。
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