第七幕

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 畏怖の念を利用する――。  だからこそ、人が集まり、願いを込める霊場に封印の場所を設けた? 「上賀茂神社はまだオフシーズンならなんとかなるだろうが、前に八坂さんで儀式をしたときはそりゃもう大変でな。夜遅くに忍び込んでひっそりやらせてもらったんだよ。 最近は本当に観光客も多いし、こういうのはやりにくい。」 「でも今日は昼に来るようにって…。」 「うん、まあ葵祭も競馬(くらべうま)も終わって人が少ないし、初めてこれを見せるのに夜だとよくわからんだろう。まあよそもんは京都のなんかの儀式だって思ってくれるさ。」  五月は、上賀茂神社に正月以外で最も人が集まるシーズンだ。  5日には賀茂競馬というその字の通り、馬を競い合わせる行事が、15日には葵祭という京都3大祭が開催されるからだ。確かに、この神社の一大イベントを終えたばかりの境内は人がまばらだ(もちろんそれでもまあまあな人だが)。  京都3大祭には葵祭の他に秋に開催される時代祭、日本3大祭の一つでもある祇園祭がある。葵祭はその中でもっとも歴史の古い祭で、紫式部の書いた源氏物語にも、登場している。  葵祭の起源は太古、別雷神(わけいかづちのかみ)が今の上賀茂神社の裏にある神山に降臨した際、馬を走らせ葵楓の蔓をつけて祭をしたことにあると言われている。  奈良時代にも、祭が無事に行われているか調べろという勅命が下っているらしく、かなり古い祭だといことがわかる。  祭の内容は、平安時代の貴族の恰好をした行列が京都御所から下賀茂神社を経由して上賀茂神社まで練り歩くというものだ。平安絵巻の行列を生で見られる。  行列は毎年5月15日に行われる。祇園祭のように何日にもわたるものではないし、平日になる可能性も高いが、それでも外国人観光客を含めてかなりの数の見物人がやってくる。    
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