第七幕

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 その反動か、この梅雨の時期は人が少ない。時たま修学旅行生や散歩がてらに境内を走る人が通るくらいだ。  和服姿の爽矢さんにちらちらと視線を送る人はいるが、怪しんでいるというより、道でテレビロケをやっている時の通行人の反応に近い。  それにわずかにいる学生たちも、大人しそうな子らが多い。カメラを取り出して撮影しようか迷っているが爽矢さんのひと睨みですぐにカメラをしまった。  一般人から聞こえない程度のボリュームで爽矢さんは話を続ける。 「これからやる封印の儀の効力は正直よくわからん。前にも言ったかもしれないが蚊除け程度のものだって聞いたこともあるしな。」 「なら、そんなことする意味あるんですか?」 健から出た当然とも言える疑問に爽矢さんは頷き 「意味はある。大きく2つ理由があってな。1つは下級の姑獲鳥から都を守ること。 姑獲鳥はその血縁で身分に差がある。位が下のものほど、理性もないから見境なく人間を襲う傾向にある。 その一方で危険なことや不快な物には近寄らない性質があるから、この程度の結界でも効力がある。逆を言えば上級は不快な物でも理性で判断して近寄ることができるから結界内には入って来れるわけだ。 2つ目の理由だが、これは御剣家を守る為だ。 この結界は昔はかなり強力なもので、姑獲鳥を寄せ付けなかった。 だが時が経つにつれ、効力が弱まった。このままではいずれ御剣家が消されると考えた当時の幹部たちは、封印の効力の維持を諦め、御剣家を守る新しい封印を作り、それを補助するものとして四方の封印を利用することにした。 そう言い伝えられている。どこまで本当かは怪しいがな。」 爽矢さんの話を聞きいて、僕は首を傾げた。
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