第七幕

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「さっきの…見ました?」  恐る恐る尋ねるが、案の定爽矢さんも健も首をかしげるばかりだ。  なんのことだとその視線が言っている。 「何か見えたのか?」  爽矢さんが柔らかい声音でそう尋ねる。それに対して、僕はゆっくりと頷いた。 「兎が…兎がいました。」 「兎?野兎か?」 「いいえ。違います。綺麗だったしそれに――僕に話しかけていた。」  爽矢さんは眉間の皺を深くした。三白眼がいつも以上に釣り上る。 「兎がお前に話しかけるなんて、そんなの――。」  “あるわけがない”――そう言おうとしたのだろう。でも爽矢さんは一旦そこで言葉を切ると何か考え込むように顎に手を当てて視線をやや下に下げた。  無言になった爽矢さんの代わりに健に答えを求めて視線を送るが健のほうも唇をかみしめて眉間に皺を寄せて考え込んでいる。 「爽矢さん?健?」 「おい、その兎――白くて目が赤くなかったか?」 「え?ええ…。」  爽矢さんが鋭い声で質問する。それもさっき見た兎の姿を正しく当てて。  爽矢さんは知ってるのか?さっき僕が見たものを。 「おい、健。どう思う?」
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