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声を掛けられた健は顔を上げて口をわずかに開けた。少し逡巡するそぶりを見せたがぽつりぽつりと言葉を零した。
「耳が…よく聞こえるようになって、先代の菊端のお母さんに会った位に。夢を見たって話しただろう?高兄に。」
「あ、ああ。」
そういえばそんなこともあった。確か不思議な夢をみて、それがきっかけで健は哨戒士になることを了承したのだ。
あの時は"そんな夢くらいであっさりと意志を変えるなんておかしい”そう感じたのを覚えている。
「あの時言わなかったか?兎を、女の人がこっちに放ったって…。」
――そういえば、そんなことを言っていたように思う。
もしかしてその時と同じものを僕も見たというのか?
偶然同じ夢を?
「お前ら二人が見たのはたぶん…菊端の力そのものだな。」
「菊端の力?」
「先々代菊端は男でな…俺ともよく話をした。そいつが言っていたんだ。白い兎の神託を受けたって。
そして俺も、力に目覚める前に九つの頭を持つ青い龍の夢を見た。
俺が夢に見た物が九頭竜の力、そして白兎が恐らく菊端の力だろうという話をした。」
兎や龍が力?どういうことだろう?
僕は戸惑うばかりだったが、健のほうは納得したように頷いている。
「俺もそう思います。」
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