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「あの兎の夢には、女の人が出てきた。俺はあの女の人を、前の菊端だと思った。
前の菊端から力を受け継いだーーそう感じたんだ。」
「ああ、先々代の俺も同じような夢を見たことがある。
九つの頭がある龍と、その足元に人影が見えた。
顔までははっきりわからなかったが、俺が龍に触れるとその人は消えた。
きっとあれが俺の前の九頭龍だと直感した。そいつが俺に九頭龍を託したんだってな。」
爽矢さんが健に続いてそう説明する。
僕は疑問を口にする。
「二人の言う通り、僕がさっき見た兎が菊端の力だとしたら、どうして僕の前に表れたんでしょう?」
「兎は何て言っていたんだ?」
「えっと…。」
何だったっけか。
そうだ、確か
「"シュは結ばれたり"って。」
「シュ?呪いのことか?」
「わからない。あと"奴らが来る"って。"犠牲が払われる"って。あと、何だっけ?なんか難しいことを言ってたんですけど…。輪廻の輪がどうとか、業が僕を蝕むとか。」
僕が伝えた言葉を爽矢さんは何度か小さな声で繰り返した。
言葉を咀嚼して吸収しようとするように。
「奴らって言うのは姑獲鳥のことだろうな。
犠牲は当然姑獲鳥によってもたらされる被害のことだろうけど、つまり姑獲鳥がもうすぐ目覚めるかそれとももう目覚めたってことだろうか。
業っていうのは俺たちの力のことだろう。
前にも説明しただろう、俺には九頭龍の業が、健には菊端の業が受け継がれている。
じゃあシュとは何だ?もし結界のことを言っているならこれから呪いをするんだぞ?まだ結ばれていない。」
「あ、でも、確か"封じは済まされた"みたいなことも言っていました。」
僕の言葉に爽矢さんは驚いたように僕をちらりと見やってますます眉間の皺を深くした。
「それってつまり…。」
そう呟くと爽矢さんはいきなり走り出した。
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