331人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
***
爺様と話をした数日後、僕は爺様と一緒に分家の神薙家を訪れていた。普段は着ることのない袴と着物を身に纏い。
御剣家と神薙家はそれぞれ武道を修めるための道場を持っている。
神薙家は槍術と長刀道を教えている。爺様に連れられやってきたのはその神薙家の槍術道場だ。ここに、僕が4人の哨戒士を探すのを助けてくれる人物がいると言うのだ。呼び鈴を鳴らし訪問を告げると中に通された。
「ようこそおいでました。」
出迎えてくれたのは槍術道場の師範の神薙健也さんだ。正月の集まりで時折顔を見かけたがこうやって面と向かって会話するのは初めてではないだろうか。
年のころは40代後半といったところか。優しい雰囲気をまとった人だ。
「御当主、それに若様とお揃いで。師範代もこの日を心待ちにしとりました。」
「爽矢殿は。」
爺様の問いかけに健也さんは微笑みを返した。
「道場で座禅を組んでますよ。すぐ呼んでまいりますから、応接間でお待ちください。」
「いや、かまへん。道場に案内してくれ。」
爺様の言葉に健也さんは頷き案内してくれた。長い廊下を渡って奥の道場につくと、健也さんは「入るよ」と中に声を掛け扉を開けた。その瞬間、独特の汗のにおいが鼻をついた。
最初のコメントを投稿しよう!