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「爽矢さん?」
僕と健は慌てて爽矢さんの後に続いた。爽矢さんは細殿の前に立ち、きょろきょろとあたりを見渡した。
「爽矢さん、どうしたんですか?」
だが爽矢さんは僕の問いには答えず、懐から何かを取り出した。
「俺はこういうの苦手なんだがな…。」
取り出したのは人の形に切り取られた白い紙だ。漫画とかで見たことがある。人型?
「それは…。」
「術式のための人形。」
「何に使うんです?」
僕の問いかけに、爽矢さんは自分の髪の毛を数本抜いて人形に押し付けて見せた。
「まあ見てろ。ここに封印が施されているかを確認する。」
そういって目を瞑り、小さな声でこう唱えた。
「青龍、白虎、朱雀、玄武と結びし封じの糸。汝の姿わが目に映せ。声に応じよ。前一騰蛇、前二朱雀、前三六合…」
すると爽矢さんの持っていた人形が風もないのに震えだしたそして爽矢さんの指からするりと離れ、空に舞っていく。
なんの呪文だろうか…。そう思っていると背中からなにかじわじわと迫ってくるような気配がした。後ろを振り向くが何もない。気のせいか?
「天一貴人、後一天后。」
後ろから迫ってくる気配を探っていると何かが視界の端に映った。
光の筋のような物がこっちに向かってきている。
「後二大陰、後三玄武、後四大裳 。」
光の筋は東西の空からそれぞれ伸びて細殿の上で交差し、円を描くようにまた反対側へと進んでいく。
爽矢さんは呪文を続ける。
「後五白虎、後六天空。同胞の血により結ばれし道示し給え。」
光の筋は二重になりゆっくりと空高く上り、消えていった。
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