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封じの儀式は結局見ることかなわず、何ともしっくりしない感覚を抱えて週明けを迎えた。
夏休み前の期末テストについてのアナウンスが徐々に増えてきた。いつもならげんなりするが、今の僕の心には響かない。
あの封印は恐らく菖蒲が張ったものだろうと言うことは、爺様も建也さんも意見が一致した。
ただ、何故封印だけして僕らの前に姿を現さないのかは誰にも分からなかった。
爺様は「また菖蒲の候補者を見せるから高天の勘で当ててくれ」と言った。でも本当に僕の勘が頼りになるのだろうか。確かに早苗さんの時は偶然中ったけど…。
「いるのかな――。菖蒲なんて。」
無意識の内にそう呟いていた。するとそれに答える声が。
「何言ってんだ?」
「亮介。」
友人の亮介がコーラとスポーツドリンクを一つずつ持って横に立っていた。
「ぼけっとしてっとコケんぞ。」
「こけないよ。そこまで運動神経わるないよ。」
亮介はにやりと笑って、スポーツドリンクを僕に渡した。
そのまま一緒に教室に入った。
「さよかいな。そういえばこの間、お前インハイ予選見に来てた?」
「え?インハイ?」
亮介は陸上部だが、インハイに出れるほどうちの陸上部は強かったか?
「今すごい失礼なこと考えとるやろ?インハイ出れんやつも予選は出るんやぞ。」
「いや、それはわかってるけど…。行ったっけ?見に。」
「西京極おったやろ?で、俺が前から目えつけとった可愛い女子と話しとったやんけ
!」
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