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西京極?インハイ?
「あ、総合体育大会のこと?」
「それそれ。」
「え、インターハイと総体って同じもの?」
「同じやで、何言ってんの。」
「まじか…。初めて知った。」
本当にびっくりした僕を、亮介はあきれた顔で見下ろした。
「ところで、さっき何言っとったん?」
「え?ああ、ただの独り言。気にせんといて。」
僕の説明に訝し気に目を細めるが、亮介は結局何も言わなかった。その代り机の上に両手をついてぐっと顔をこちらに近づけ、
「で、お前さ。あの子と知り合いなの?」
「あの子?」
「予選の時、一緒に話してただろ?洛北の子だよ。」
「ああ…。」
早苗さんのことだろうか?まさか亮介が見ていたとは。
「親戚の人だよ。亮介こそ、知り合いなの?」
「何だよー。親戚ならそういってくれればええのに。前に言うたやろ?他の学校にかわええ子がいるでって。」
「ああ、そんなこと言っていたような…。」
1か月かそこらほど前にそんな話をしていた気がする。
世間話として聞き流していたが、まさかその話に出ていた子が哨戒士の一人だったなんて。
「紹介してえ。」
「無理。そこまで仲良くないもん。」
「ちぇ、ケチやな。」
そういうと、亮介は僕の前の席の机に脚を組んで座った。
「青春が足りひんわー。」
「同じ学校で探しなよ。いくらでもいるだろ?中等部も含めればかなりの数。」
「いーや!俺はごくごく普通のお嬢さんとごくごく普通の青春を送りたいの!こんな、夏休みに必ず旅行に行ったり、誕生日にブランド物のバックもらう家の奴とは付き合えへん!」
亮介はごくごく一般的な家の出身だ。両親は共働きでお父さんもお母さんも中小企業で働いている。だからこの学校のいろいろな慣習やお嬢様気分の抜けない女子生徒に対して拒否的だ。そんな彼が、なぜ僕と仲良くしているのか、正直言うとわからない。自分で言うのもなんだが、結構大きな家の出身なんだが…。
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