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亮介は苦笑を漏らし、
「お前も同い年やけど?」
「精神年齢の問題かな?」
「なんやてー?」
くすくすと面白そうに笑う亮介に僕も思わず笑ってしまう。
「そういえば、お前さ、8月の修学旅行の準備しとる?」
「ああ…。」
うちの高校は語学の短期留学という形で8月に海外研修に行くことになっている。行先はオーストラリア。
「何にもしてないわ。両替しないと…。」
「為替みとかへんと損するで。」
「おっさんくさいこと言うな。」
オーストラリアドルってどこでも替えれるかな?帰ったら母さんに聞こう。
あとはスーツケースとプラグと変電気かな。
ぼんやり考えている僕の横で亮介は溜息を吐いた。
「はあ、なんでオーストラリアなんやろ。」
「伝統だからやろ。」
それはわかっていると亮介は言って、
「そうじゃなくてさー。別に東京とかでよくないか?高いやん。」
「まあ確かになあ。」
「料理もまずいし。」
僕は海外旅行はアメリカの短期研修しか経験がないが、父も祖父も同じようなことを言っていた気がする。
――そこでしか見えない景色や文化に触れるのはいいが、せめて日本の食事を食べたい。
父がニュージーランド出張に行ったときにそういっていたのは未だ記憶に新しい。
本当にまずいのか、単に舌になじまないのかは微妙なところだが。
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