第八幕

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――――――― ――――――――  御剣家と神薙家の幹部は、両家が持っている道場の師範・師範代やその他家業を支える地位の高い人たちで構成されている。  両家の持つ道場には、健也さんの運営される槍術道場や、爺様が昔運営していたという剣術道場、柔術と合気道などの総合体術を教える道場、弓道道場がある。  幹部の中に見知った顔もいくつかある。  爺様と健也さん、雄一さん。それ以外に弓道道場師範の春子さん、体術道場師範の志鶴さんに師範代の貴司さん。そこらへんは古株で、僕が幼いころに何度かあっている。  彼らの前に立つとき、爺様はいつものような着流しではなく、紋付袴だ。  僕も同じように、御剣家の家紋である右向きの月の中に鵺がいる家紋の入った紋付袴を身に着けた。  着付けを手伝ってくれる爽矢さんもシンプルな黒の袴に白い道着を身に着けている。上に羽織りを羽織っていて、その背中には九つの頭を持つ龍が互いの首にかみつこうとしている様子を描いた紋がある。  哨戒士にはそれぞれ紋があるそうだ。  胡蝶は桜の花の形をした羽をもつ蝶とそれに向かって吼える虎。  菊端は丸まった兎。その尾には菊の模様が入っている。  菖蒲は眼のような形をした枠の中に菖蒲の花が咲いている。  各道場の神棚にも、これらの紋が入っていた。そのことを爽矢さんに聞くと、 「哨戒士は各道場に入って師範として家の者に武術を教えるのも役目だから」  と返ってきた。
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