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するとその様子を見ていた上手に座る老人が口を開いた。
「巌先生。否、九頭龍殿。
どうか怒りをお収めください。
貴方もよう知っとるでしょう。菖蒲様は大局を見るあまり儂らには理解しがたい考えを巡らせる。」
老人の言葉に幾人かがうなずくが、老人は彼らを睨みつけ牽制すると続ける。
「歳をとると、理解できんもんは”それが間違っている”と考えるんが人間や。
しかも儂らの記憶にあるあんたらはいつだって若い姿。その当時はあんたらより若僧やったのにな。儂らはついついあんたらを若者と侮る。
愚かな儂らを、どうか堪忍してください。」
爽矢さんは静かにその謝罪を聞いていた。
そしてゆっくりと言葉を紡いだ。
「…すまんな。少しきつい言い方をした。確かに先々代の九頭龍からすればお前らは自分の弟子の世代だが、お前らにすれば”俺”はただの若僧と違いないな。それは十分に理解していたつもりだったんだがな…。」
「ふふ。あんた、儂のことも完全に餓鬼扱いやしな。」
爺様が爽矢さんに突っ込むと、爽矢さんは気まずそうにそっぽを向いた。
よかった、幾分か空気が和らいだ。
僕や健、早苗さんだけでなく、若手の幹部たちもほっとした表情を浮かべたのが分かった。
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