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爺様が言った“女子”という言い方が気になったようだ。言われてみれば。なぜ女子だけに限定したのだろう?
健も同じように考えたらしい。驚きと疑問が綯い交ぜになった顔を爺様に向けた。
「あれ?言っとらんかったか?」
「何がです?」
「菖蒲は歴代皆女やで。」
爺様のその言葉に僕、健、早苗さんの声がハモる。
「「「そうなんですか?」」」
「あれ、言ってなかったか?」
爽矢さんが頭を掻き、少し気まずそうに笑った。聞いてない聞いてない!
聞いたのは菖蒲が歴代の記憶を持っているってところだけだ。
「それ、本当ですか?」
「少なくとも残っている記録で確認できる限りは全員女やな。」
「性別について特別言及されていない時もあるが、前後の代での記述から推測するに、菖蒲が男だったことは一度もないな。」
爺様も爽矢さんも口をそろえる。
そうなのかーー。何で教えてくれないんだ。まあ知らされたところで大して何も変わらないけど。
思わず口が尖る。
「すまん、当たり前すぎて伝えるの忘れとったわ。」
「でも。なぜ菖蒲だけが記憶を引き継いだり性別が決まっているんですか?」
明らかに菖蒲だけ特別だ。他の哨戒士にはない特徴を、多く持っている。
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