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「それで、私はよく彼を目で追っとったんですよ。共通の授業の時とか。
彼、凄く卒なくなんでもこなさはるんです。体育のバスケの時間とか、目立つことはしないけど周りに指示出してゲームメイクをしているのがわかって。
凄く視野が広いみたいで。チームのメンバーの配置とか完璧に把握してて、するりとパスを通すんです。
でもあんまり派手なプレーはしないからやっかまれたりもしないし。そういうのがなんていうか、怖いなって。」
言わんとすることが見えてきた。
年齢不相応の落ち着きや人の使い方ーー。たしかに見方によっては恐ろしい。その彼の様子を見て、そして彼が神薙家の人間と知り、早苗さんは思ったんだろう。「きっと彼が菖蒲だ」と。
だがついさっき、菖蒲は全員女だったと聞き、納得いかなくなってしまったーー。
爽矢さんは低く唸り声をあげた。
「なるほど確かに。話だけ聞けば菖蒲の性格に似通ったところがある。だが男なんだろ?」
「ええ、間違いなく。」
「因みに名前は?」
健也さんが尋ねる。早苗さんは「えっと」とつかえながら答えた。
「桔梗です。神薙桔梗。」
ん?その名前、どこかで聞いた覚えがある。僕と同じことを思ったのか、爺様と爽矢さんは顔を見合わせた。
「それ、なんや聞き覚えあるな。」
「確か、早苗を見に行く前に絞り込んだ哨戒士候補の一人だな。」
そうだーー。僕が選んだ哨戒士と思う人のリストに残っていた人。
進学校に通う、優秀な男性だと書いてあった気がする。
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