第八幕

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 子どもに罪はないとわかりつつも、不貞の子に対しての嫌悪は否めないと言ったところかーー。残酷だな。 「そもそも、男なんやろ?」  爺様が貴司さんに尋ねる。貴司さんは首を縦に振った。 「確かに男児でした。間違いない。それに性格も私の覚えてとる菖蒲様とは違ごうとります。大人に怯えて、嫌悪感を剥き出しにしとりましたし。被虐の子どもそのものと言った様子でした。」 「ふむ。」 「勿論、成長するにつれて性格は多少変わっていきましたが、それでもほんまに真面目で無口な子です。菖蒲様の飄々とした様子はあまり感じまへん。」  確かにと、爺様は唸った。爽矢さんも頷いている。爺様は貴司さんに、 「因みに、今は誰がそいつの面倒みてるんや?」 「後見人は(たもと)が務めとりますがーー、わかりますか?」 「袂?確か先代の頃に京大で学生運動調べとったあれか?」 「確か、先代菖蒲とつながったったやつやな?」  先ほどの老人が口を挟む。志鶴さんは頷き、貴司さんの説明に補足を加えた。 「先代菖蒲のもとで剣術習っとったやつです。菖蒲様が亡くなった折、アメリカの反戦運動に入り込んで大怪我して前線は退いたんですが。」 「菖蒲と関わりのあるやつのところに引き取られた子どもかーー。」  爽矢さんは眉間に皺を寄せて唸った。 「それだと単に、菖蒲に憧れて菖蒲と似た行動取ってるうちに、育ててる子どもにも影響が及んだって、考える方が自然だよな。」 「まあ、考えても結論はでえへんし、今度いっぺん高天に会わせればええんちゃうか?高天の前では哨戒士は嘘はつけへん。それは菖蒲様も同じなんやから。」
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