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訳の分からぬまま話は進む。今度は春子さんが爽矢さんに反論する。
「“衛士の御子は主人が眠る間、その体を守り主人の目覚めを側で見守らなくてはならない”。
でもそれは菖蒲様が唱えた仮説やなかったですか?たしかに今までの衛士の御子は皆、主人が休眠してから覚醒するまで決してそばを離れへんかった。
でもそれは“そうしたいからそうしてる”だけで、“そうしないと生きていけない”わけでは無いんちゃいますか?」
しかし爽矢さんがすかさず反論する。
「もし、できるがしなかったならそれはそれで矛盾がある。休眠期間に奴らは今まで何もしてこなかった。動くことができるなら哨戒士のいない間にもっと人間社会に干渉するだろうが、普通。」
爽矢さんの意見に何人かが頷く。何のことを話しているのか分からぬまま僕は爺様に視線を送った。しかし、爺様は何事か真剣に考えており、僕の視線に気がつかない。
しばらくして、爺様は顔を上げた。
「うん、爽矢の言う通りや。」
「御当主。」
春子さんが渋い顔をする。
「あいつらは隙があれば人間社会に干渉してくる。そやのにこのスパイの件以外に何も知らせがないんはおかしい。」
「闇に紛れれば我々の目をごまかし島を出入りできます。」
「出入りはできるやろうけど、それならこの休眠期間の間、もうちょい積極的に動けるはずや。」
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