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「隠す?」
爽矢さんの言葉に健也さんが頷いた。
「貴司と僕が、哨戒士候補である子どもを調べていたときも、かなり非協力的というかーー。最低限度のことしか教えてくれなかったのです。」
「例えば?」
「通っている学校の名前。部活動。それだけです。成績やらなんやらは同じ学校に通っていた他の子どもを経由して調べました。
よほど大事な息子なのだろうと貴司は気にしていませんでしたが…。」
「お前は気になったんやな?」
爺様の言葉に、健也さんがうなずく。
「杞憂かもしれませんが。」
「なんにしても、高天殿には桔梗と会ってもらわなあかへんな。」
忠清さんがふっと息を吐いた。
「会わせてくれるかも微妙ですよ。」
健也さんが苦笑を漏らす。
「そん時は当主命令やな。」
「そうするしかありまへんね。」
忠清さんと爺様のやり取りを爽矢さんは口をはさんだ。
「その桔梗ってやつは、胡蝶――早苗のが学校にいるんだろうが。早苗が直接話聞けばいいんじゃねえのか。」
「もう高校は夏休みやろ。」
すかさず爺様がそう言い返す。確かに。この週末から夏休みが始まっている。
僕が無言でうなずくと爽矢さんはちっと舌打ちをした。そして早苗さんに声をかける。
「部活とかで来ねえのかよ?」
「あの人、帰宅部なんで…。」
首をすくめて申し訳なさそうに返答する早苗さん。別に早苗さんは悪くはないのに、なんか気の毒だ。
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