第八幕

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 信念ーー。  僕にはそんなものはない。少なくとも今は。そんな僕がこの家の次期当主だなんてなんだか申し訳のない気がする。  正直まだ僕には姑獲鳥とのやり合いというものが全く想像できていないのだ。  健や早苗さんだってそうなんじゃないだろうか。  哨戒士である僕らはそんなふわふわした状態で、爺様たちは腹を括って。  歴代の哨戒士たちはどんな思いだったんだろう?みんな信念とやらを持って戦っていたのだろうか?ならば僕らもいつかそういったものが芽生えるのだろうか?  菖蒲と言う人は、信念を持って務めを果たしていたのだろうか。  ふと、亮介の言葉を思い出した。 ーー心を病む、かな? ーー前世って、つまり死んだ人間の一生分の記憶っていうことやろ?嫌やわ、そんなん。死ぬ瞬間とか覚えてるかも知れへんねんやろ?  菖蒲はそんな記憶を、いつも持って生まれているのか。  何度も、何度も生きて死んで。その記憶を引き継いで、それでも戦う。それは彼女の信念によるところだったのだろうかーー。  だとすれば、今はまだ姿を現さないのは、その信念が折れてしまうまたからだろうか?  それとも信念などなくても、戦うことはできるのだろうか?  わからない。きっと答えは菖蒲と言う人にしかわからない。  どんな人なんだろう?  爺様や爽矢さんから話をどんなに聞いても、やはり想像がつかない。あってみたい。話してみたい。いったいどんな人なのか、知りたい。  そう思うと共に、少し恐ろしさも感じるのだ。あの写真の少女らの目ーーそれに自分が映った時、いったい何が起こるのだろう?  
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