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「なんで胡蝶様は僕に優しゅうしてくれはるんですか?」
ふと湧いて出た疑問を口にする。すると、暫く逡巡して、
「貴方が、あの方の心の支柱になれる気がするしたからよ。」
意味がわからず首を傾げると、胡蝶様はそっと儂の頭を撫でた。
「貴方、何故菖蒲様や私が特別扱いされるか知ってる?」
質問の意味を少し考える。答えはわからへんかった。ただ、師匠たちの存在を知ったときには菖蒲様たちは特別な存在になっとった。
「いずれ貴方にもわかる日が来ると思うけど、私たちのことをみんな人としては見ない。それは仕方のないことだけど、とても寂しいことでもあるの。
貴方もきっといつか我々のことを本当の意味で知るでしょう。
その時でもきっと貴方は菖蒲様のことを1人の孤独な人間だとわかってくれると思ったからーー。」
未だ幼い儂には孤独という言葉の意味がわからずキョトンとしていた。
ただなんとなくーーその言葉が寂しい物だとは感じていた。
胡蝶様は寂しそうな目をしていた。
沢山の弟子に囲まれている人やのに。菖蒲様も胡蝶様も時々とても悲しい目をする。
なんでやろ?あの頃はわからへんかったーー。
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