第九幕

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 爽矢さんに今日のことを慌てて話す。爽矢さんは黙って僕の話に耳を傾けていた。 「と、言うわけなんです。なのでちょっと今厳しい情勢で…。 それに、桔梗さんは僕を故意に避けているように見えるし。」  爽矢さんはうなりながら 『その可能性はあるわな。実際、どうやら(たもと)はお前がオーストラリア入国後、自分もオーストラリアに向かってる。袂はお前と桔梗の接触を避けたがってる。下手すれば帰りの空港でも会えなくなるし、帰国後も何かと理由をつけてくる可能性は否めん。』  なんと、袂さんがこちらに来ている?  後見人として、桔梗さんのことを心配してるからだろうか、それともやはり菖蒲と桔梗さんにはなにか関係があるのだろうか?  そうだとして、何故袂さんが桔梗さんと僕らを会わせないようにしているかが気になる。 『健也殿に聞いたんだが、袂は先代の頃の戦いで御剣家の対応を批判してたようだ。 対応を誤り、菖蒲に対して適切な援助をしなかったから先代菖蒲が死んだと。』 「つまり、御剣家への反発で菖蒲を隠している?」 『まあそんなとこだな。憶測に過ぎないが。だが俺らの考えの通り桔梗が菖蒲なら、ただ袂が菖蒲を隠してるんじゃない。菖蒲自身も身を隠す意思があるんだ。』 「なんで、そんなことを…。」 『わからん。益々もってややこしいことになった。袂の動きが読めん。袂と桔梗の間になにかあることは確かだと思う。 今の状況から、可能性として思いつくことはまず、桔梗が菖蒲である場合。 この場合袂と桔梗の関係性は単純だ。前世から続く師弟関係。菖蒲がなんらかの理由があって身を隠す必要があり、それを袂が手伝っている。 ただこの場合だと何故本家が今まで桔梗を菖蒲と見分けられなかったのかという疑問が残る。 桔梗は幼い頃に生い立ちのことで本家と深く関わっている。それなのにあいつが菖蒲である可能性に全く気がつかないなんて、菖蒲のやつ、かなり綿密に作戦を練っていたんだ。何のためにそんなことをしたのか、それがわからん。 二つ目は桔梗は菖蒲ではない場合。桔梗が菖蒲じゃないなら、他に菖蒲がいるはずだが、その本当の菖蒲と袂達との関係が見えない。年頃の御剣家、神薙家の子供らと袂も桔梗もほぼ接触がないんだ。だから袂が何のためにこんな行動を取っているかの説明がつかない。』
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