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「爽。」
「瀬奈。」
道場に入ると爽は大刀を右手でもてあそんでいた。軽く10㎏を越えるこの武器も彼には練習用の竹槍とさして変わらないのだろう。
「爽、何故?」
「ああ、あんなきつい言い方したのかってことか?」
「違う。何故標準語で喋ってたんだ。」
「ん?ああ…。」
しばらく考えたのち爽は
「そっちの方がいいだろうと思ったから――やとお前は納得せんよな。」
「どうしてそう思ったのかを知りたい。」
「それは、まあ…先々代の高天が京都弁あんま喋りたがらんかったから高天の前では控えた方がええかなって思うて。でもあの坊主、あんまり気にしなさそうやな。」
そう言って忍び笑いをする爽は知らない人のように見えた。
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