第四幕

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 爽矢さんたちに会ったのはつい先日のこと。それからずっと僕は 考えている。  哨戒士のこと、姑獲鳥のこと。  僕のこと。  僕は当たり前のように今の状況を享受してきた。どうしてだろう?  本当にこれが、血の力なのかな?  なら両親は?  どうして母さんと父さんは疑問に思わなかったんだろう、現当主の爺様の孫でもない僕が次期当主に任命されたことを。  普通、変だなとか思うよな?特に父さんは婿養子だ。外から来た自分の息子が突然当主と言われて何か言わなかったんだろうか?  湧いて出てきた疑問をぶつけたくても、仕事で留守にしがちな父は今も家にいない。  悶々とした気持ちを持て余していると、突如携帯が振動した。振動はしばらく続く。着信だ。  なんだよーー。  面倒くさいと思いつつ身体を起こして画面を見れば相手は高校の友人だ。 「もしもし?」 『おう、御剣。今暇か?』  今の自分のテンションと正反対の明るい声に思わずため息が出た。 「暇じゃないって言っても電話続けるんやろ?」 『そりゃあもう。ゴールデンウィーク、暇か?』 「僕は暇やけど亮介、部活は?」 『もちろんあるんやけど、そん時試合があってなあ、その相手校にな、めっちゃ美人の…。『きるで~。』  電話口から「おいこら」と叫ぶ声が聞こえたが無視。  悪い亮介、今はそれどころじゃない。    今の自分にとって、男子高校生らしい馬鹿げた会話がなんだかとても遠いものに聞こえた。
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