第四幕

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 また、あの異常聴力が出てきている?一度は治まったはずなのに…?  いや待て、あの時確か爽矢さんは―― “一時的なものだ、高天から離れればもう一度あの地獄へ逆戻り”  そうだ。そういっていた。 『坊ちゃん?』  電話口からの訝しげな声で現実に引き戻される。 「あ、ああ…。爽矢さんですよね、わかりました…。聞いてみますね。」 『お願いね。』  電話が切れて耳障りな電子音が耳に届く。 「叔母さんなんだって?」  母が声をかけてきたが答えもせず部屋に戻る。母は「もう、返事くらいしいや」と小さな声でぶつくさつぶやいていたが無視だ。  ベッドの上に放り出していた携帯を手に取った。アドレス帳から爺様の電話番号を検索する。 「…。」  少し逡巡して電話を掛けた。
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