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儂、御剣修二郎は痛む腰を必死に真っ直ぐに留め、場を見守っていた。
壮年の男女が口々に話を展開する。
「御剣家の有する道場では特に徴候のある者は見つかっとらんのか。」
「神薙は九頭竜が見つかっとる。もう他にはおらんのでは?やはり御剣から探すのが得策。」
「はよせな、奴等が動き出すで。」
「はよ菖蒲様を見つけな。」
「ですが、菊端様が見つかったのはよかった。奴等の動きを察するには一番有用な力ですからな。」
月一回の御剣家、神薙家の合同例会。両家の有する道場の責任者をはじめとした幹部が集まって話し合いをする。
姑獲鳥の活動期を終えると道場経営の状況などを話す場と化すが、爽矢と高天が生まれてからは基本的には哨戒士の存在確認の場になっている。
当主になって20年近く経つが徐々にこの会も緊迫感を増している。
隣に座る爽矢を見れば退屈を感じていると隠すつもりがないらしく欠伸までしとる。
それを見ている健也が呆れといらだちを露わにして――。
その隣に座るのは御剣家の持つ剣術道場を管理する雄一。
彼らの向かいに座るのは体術道場の師範代であり、先代九頭竜の弟子貴志と先代菊端の同輩の春子。
雄一を除いて皆、齢は五十前後。彼らの後ろには儂と同年代の幹部が控えている。
「菊端様は記憶を失ってはる。ならばやはり同じ系統の能力者の菖蒲様を一刻も早く見つけなあきませんな。」
「それに胡蝶様。即戦力になるで。」
「…それらも重要ですが、まずは見つかった菊端様。彼は未だ若い。戦えるのか…。」
「記録では12歳で戦場に出た哨戒士もいる。問題にはならんやろう。」
「うむ…。」
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