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誰だとざわつく他の幹部連中。しかし儂にはその名前に聞き覚えがあった。
御剣清子――先代菊端の…。
「なるほど…。ええかもしれへんな。」
春子よりもずっと、菊端に詳しい。まあまともに話ができるかということには心配が残るが。だが寧ろそのほうがいいかもしれへん。春子に先代菊端について語らせるとおそらく言葉を弄して逆に混乱を招く可能性もある。
「ええやろう。儂が連れて行こう。高天も同行させる。」
春子は小さくうなずいた。どういうつもりで清子のことを提案したのかはその表情からはくみ取れない。もしかしたら
その時、場の空気を変える電子音が響いた。携帯電話の着信音。皆がきょろきょろよあたりを見回し出所を探る。
「すまんすまん。儂や。」
何の変哲もない初期設定のままの音。懐を探り取り出せば着信元には儂の次の当主の名前が。
「ちょっと出てくるわ。もし他に話題がなければこの場は解散やな。」
それだけ言うと廊下に出る。通話に切り替える。
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