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「電話、高天からだったんか?」
部屋に戻ればすでに場は解散しており、残っているのは爽矢と健也、それに雄一のみ。
春子の姿はない。
「春子、ほんまに帰らはったんか。」
「あの人はあんまり今の菊端には関わりとうないんやろ。」
「相変わらずやなあ。」
ついつい溜息が漏れる。春子は幹部会にはいるものの、どこか面倒ごとを避けたいと思ってくれる節がある。
「で、高天なんやって?」
「うん?なんで高天やってわかったんや?さっきの電話。」
「勘。」
「さいですか。」
「で、なんだって?」
「健がまた耳の力を抑えられんくなってるみたいやな。それで相談したいんやと。どう動けばいいんかわからへんのやろう。へたなことすなって釘刺してたからなあ。」
「なるほど。今回の高天は素直やねえ。」
愉快そうに笑う爽矢はどこか不気味やな。
幼い頃見た九頭竜も、いつも享楽的な人間だった。
見た目はあの頃と違うが、この爽矢は間違いなく儂の知っとる九頭竜やな。
「まあちょうどええか。二人そろって清子はんに会ってもらおう。」
「そやな…。」
爽矢は欠伸を一つつくと
「ところで清子って誰だ?」
「…知らんのかい。」
「だって俺、前の代の記憶、ほぼ皆無だから。」
そうやったな…。こいつは先々代の時の記憶しかない。一代前の記憶を飛ばすんなんて奇妙やけど。
せやけど儂にはやりやすい。一応面識があった先々代とは話が通じるしな。
ただ先代の記憶がない分、先代哨戒士とのみ関係があった者らとは関係を作るのに苦労していた。
当然春子や清子のことも知らない。
「清子は――。」
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