第四幕

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 ***  爺様に呼び出され、健とともにある女性に会いに行くことになった。 その女性は日赤病院に入院しているらしく車で行くということになった。  日赤病院は東福寺の近くにある。このあたりは秋になると観光客も多くなるが、今は比較的人が少ないほうだろう。  運転手は爽矢さんだった。  初めて会ったときと違って普通の洋服を着た彼は手足が長く、とてもかっこいい。普通の若者に見えた。  助手席に爺様が座り、後部座席に僕と健が座る。車内はでは誰もしゃべらず沈黙に支配された空気がひどく重苦しい。  横に座る健の表情は硬い。  先ほど、僕の言葉で何とか聴力を抑えることが出来たようなのだが、それに対して何か思っている様子だ。  下賀茂神社の前を通り過ぎ、川端通りを下る。右手には鴨川が見える。 四条通の交差点まで来たところでちょっとした渋滞に巻き込まれた。  このあたりは祇園さん(八坂神社のこと)や南座があり、京都を走る二つの私鉄の連絡地点ということもあって常に観光客で溢れかえっている。
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