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「ほんまここらへんは人ばっかやなあ。」
爺様の言葉に爽矢さんも頷く。
「南座で歌舞伎あるときは特にえげつないな。後は祇園祭ん時とか。」
「あれはほんま気持ち悪いくらいの人やなあ。」
祇園祭は京都三代祭りの一つで、日本を代表するお祭りでもある。
その祭りは確か、昔天皇が死んだあとに天変地異が起こってそれを天皇の祟りで、その天皇が素戔嗚尊であったと考えた当時の人々が始めた祭りだったと思う。
なのでこのお祭りは、素戔嗚尊を祀る八坂神社の祭りなのだ。
このお祭りのときはこのあたりは人の波が流れる川のようになる。
「あの…。」
爽矢さんと爺様ののんびりとした会話に、健が割って入った。
「なんや?」
「今から会いに行く人って、誰なんですか?」
「…。」
それは僕も聞きたかった点だ。
爺様には“会わせたい人がいるから日赤に行くぞ”としか聞いていない。見舞いの品にと買ったピンクの花束から、おそらく女性が相手だろうと思うが。
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