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「あの、清子さんって、何者なんです?それにさっきから紅緒って何度も聞いた名前でしたけど」
追い出された僕たちは、今の時間使用されていない、病棟の食堂に集まった。
そこで僕が投げかけた質問に答えてくれたのは、爽矢さんだった。
「紅緒は清子の娘だ。」
それはさっき京太郎さんにも聞いた。僕が知りたいのはそこじゃない。
「それは知ってます。だからなんでその紅緒さんの関係者にあわなきゃいけないんです?紅緒さんって何者なんですか?」
思わず早口でまくしたてる。
「紅緒は菊端だったものです。」
僕の質問に、部屋に入ってきた京太郎さんが答えてくれた。その表情は、気のせいだろうか、先ほどより柔らかく見える。
「菊端だったもの…?」
「つまり先代の菊端や。」
爺様が説明をくわえる。
「先代…菊端!?」
僕の反応に、京太郎さんは苦笑いだ。
「聞いていなかったのですね。」
「言わへんほうが、健の自然な反応がでてええやん。」
「ええ、それでよかったと思います。母も、現実を受け入れられる。」
そういって僕らの前に腰掛ける京太郎さん。そして
「先代の菊端、私の妹の紅緒のことは全くご存じないですか?」
「…はい。」
「ええ。」
僕と健の返答に頷くと京太郎さんは話し始めた。先代菊端――紅緒のことを。
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