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しかし学生運動も暴走し、もはやテロの域にまで達していました。国内で活動していた哨戒士も、安全ではなくなった。
あさま山荘事件はご存じでしょう。
銃撃戦や爆弾の使用が学生運動でも頻回に見られ、紅緒も死を身近に感じるようになっていきました。
わずか数年の間に、時代が様相を変えていく。
あの子が力を手に入れてからの、ほんのわずかな間に。
姑獲鳥たちが攻勢を強める中、あの子はこの国のため、自らの力を使い続けました。
そして、あの子は学生運動を行うグループに武器を流したり、作戦を指示する姑獲鳥の存在、そしてその表の世界での姿かたちの特定に至りました。
妹は、この手に入れた情報をもとに彼らをこの国から追い出すことを決意しました。
当該の姑獲鳥を殺そうとしたのです。
母は、止めました。
当然です。
他の哨戒士はすでに死んでいるか、行方不明。
死ににいくようなものだと馬鹿でもわかる。
だがあの子は行ってしまった。
“戦わなきゃ”
“勘忍ね”
母に謝るあの子の顔。忘れることはできません。
彼女は笑っていたのです。何の心配もない、というように。
まるで学校に行くように、自然に出ていき、そして二度と帰ってこなかった。
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