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戻ったのは――指一本です。
小指の指一本。
何があったというのか――誰も答えは知りません。
遺体が返ってきただけよかった。
そう思い込もうとしました。
菖蒲様は、生きながら燃やされたのですから。
九頭龍様は、爆撃に巻き込まれて死体も帰ってこなかったのだから。
これまでの他の哨戒士だって、みんなみんなおぞましい方法で殺されてきたのだから。
でも、そんな言葉じゃあ僕も母も救われなかった。当たり前のことですが。
僕はね、あの指と最後に契りを結んだのです。母を守ると――。
その小指が返ってきて、それに触れたとき、僕は再度誓いました。
妹の分も、母を守ろうと。
妹が母に示せなかった愛情を、僕は受け継いだ。
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