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京太郎さんは、血を吐くように、そう呟いた。
何かを耐えるようで、でもどこかすっきりしたようで――。
「確か、健君と、言いましたね。」
「はい…。」
健に真剣なまなざしを向ける京太郎さん。健はたじろいだ。
「君は、今の菊端です。これからたくさん、苦しい思いをすると思う。私に何かを言う権利はない。言えるとすれば、君と同じ苦労を背負うものだ。だから、これを君に託す。」
そういって京太郎さんは、鞄から梱包されたなにかを取り出し、健に差し出した。
健は躊躇う素振りを見せ、爺様と僕をちらりと目で確認した。爺様が頷いた後、京太郎さんから小包を受け取って、ゆっくりと梱包を解いた。
僕も近づいて中を見た。そこにあったのは古いハードカバーのノートだった。
「これは?」
「あの子の、紅緒の日記です。」
「!!」
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