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「私は、あの子が亡くなってしばらくは、後悔ばかりしていました。
やはり止めるべきだったと、あの子はこの家に殺されたと。でもね、この日記と読んで、あの子の生き様を受け入れることができた。
今、これを必要とするのはきっと君だろうから、預けます。」
「…。」
「…頑張って。」
そういうと、京太郎さんは“母のもとに戻ります”と席を立った。健はその間、じっと紅緒さんの日記を見ていたが、不意に勢いよく立ち上がった。
「あの!」
京太郎さんの後ろ姿に声をかけた。
京太郎さんはゆっくりと振り返った。
「なんでさっきの話したんです?だって、あんなの聞いたら、普通その姑獲鳥と戦おうなんて考えないでしょう。」
「…。そうですね。
でも、あの子は自分なりに考えて行動していたから――。
そしてその結果、あの子はああいう死に方をしたけれど、私たち家族が何を思おうと、彼女はその死に方を、後悔していないと信じています。
それになにより、私はあの子が命を賭して守ろうとしたものを、君にも守ってほしいと思っている。あの子の生きざまに、意味を与えてほしいと思っている。
つまりはエゴです。
僕ら家族は…いいえ。この御剣家は、みんな過去に囚われた囚人なのです。
哨戒士や姑獲鳥に関われば、みんなそうなる。
どうか、紅緒のためにもその力を使ってください。」
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