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「いつも亜由美だけ見てる。
……あそこまでされて、わかってないの?」
耳がくすぐったくて、赤くなった。
「だったらかなりショックかなぁ」
セリフのわりに屈託がない。
「オレはね、知ってた」
「…………何を?」
「亜由美がオレを大好きだって」
「!!」
刹那の衝撃。それから、
「うん。……知られてたの、知ってた」
家族の住むこの狭い一室で流れる穏やかな時間。あのマンションで、分かり合えた時のような充足感。
ラクして手に入れたわけじゃない。ここまでの道のりは、とってもとっても、大変だった。
「亜由美、結婚しよう」
やっと辿り着いた、幸せのキス。軽く、ついばむような……。
「…………ありがと、彼方」
提案を、呑んでくれた。
確かな約束。
「オレの実家のことで、いろいろ迷惑かけるかもだけど……」
「大丈夫だよ、アタシもね、うちの家族も、見た目よりずっと、適応力あるし、打たれ強いよ?」
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