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亜由美は手に取ったスマホの画面を見て動揺した。
そこに表示されたのは、待ちわびたメッセージではなく、知らない番号からのショートメール。
彼が、自分に知らせずに番号を変えたのだろうか。
……いや。だとしたら、彼の性格上、二度と連絡をよこさないはずだ。
じゃあ……?
「……ぇ?」
開いた画面を見つめ、驚きに飛び起きた。
『あなたが前から好きでした』
署名のない一文だけのメール。
…………誰?
心当たりはない。中学校からずっと、エスカレーター式に大学に上がった今でも変わらず、亜由美の周りは女子だらけだ。
一年生の秋、学祭に来た二つ年上の彼に声をかけられて付き合い始めた以外に、男性の知り合いは皆無に等しい。
間違いメールだろうか。
ブブブブ……ブブブブ……
戸惑っていると、ショートメールがもう一件。
一緒に表示された時刻は、すでに日付が変わって久しいことを教えている。
こんな深夜に突然こんなメールを寄越す人物に、ほんのちょっと興味が湧いた。
この相手も亜由美と同じく、鬱々とした想いを深夜まで抱えて持て余しているのかもしれない。
『付き合ってください』
続いて届いた文章。
……どうしよう、こんな大切なことを……。
つかの間逡巡して、『どなたですか?間違ってませんか』それだけ返信する。
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