1章 SMS

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 あのメールのヒト、ちゃんと気付くとイイな。  スマホを手に、仰向けに倒れ込んだ。ぼふんと揺れたベッドにうつ伏せになると、亜由美は枕に強く顔を押し付けた。  ふふふ……  誰にも聞かれないですむ自嘲に歪んだ笑い。  他人の心配してるなんてバカみたい。そんな余裕なんてないくせに。  いつの頃からか、こうやって泣く癖がついた。  高校生までは、悔し泣き。部活のレギュラー争いに泣き、大会の敗退に泣いた。  でも、今は違う。この世に、こんなにも苦しく、こんなにも切ない想いがあると知ってしまったから。  ブブ、ブブ、ブブ、ブブ、ブブ……  泣き疲れた意識が眠りへと手を伸ばした瞬間、通話の着信が知らされた。  「亜由美は眠たいとキャラ変するよな。あのキャラ、好き」彼と知り合って、最初の頃に言われた言葉。  だからだろうか、いつも電話は狙って深夜だ。 「はい……」  辛うじて、腕が動いた。 「…………………………オレ」  聞き覚えのない、低く陰鬱な声。違和感に、のそりと目を開けた。 「……だあれ?」  寝ぼけて間延びした言い方になってしまったけれど、危機感を起こすことができたから亜由美としては上出来だ。 「…………電話、待ってたんでしょ?」  淡々と、人を小馬鹿にするような。  いい声だな、わりと好きかも……なんて思ってしまったけど、 「アタシはぁ、祐介くんからの電話がいいのっ!」  気づけば大声が口をついていた。姉の部屋との境の壁が「どん!」と叩かれる。
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