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あのメールのヒト、ちゃんと気付くとイイな。
スマホを手に、仰向けに倒れ込んだ。ぼふんと揺れたベッドにうつ伏せになると、亜由美は枕に強く顔を押し付けた。
ふふふ……
誰にも聞かれないですむ自嘲に歪んだ笑い。
他人の心配してるなんてバカみたい。そんな余裕なんてないくせに。
いつの頃からか、こうやって泣く癖がついた。
高校生までは、悔し泣き。部活のレギュラー争いに泣き、大会の敗退に泣いた。
でも、今は違う。この世に、こんなにも苦しく、こんなにも切ない想いがあると知ってしまったから。
ブブ、ブブ、ブブ、ブブ、ブブ……
泣き疲れた意識が眠りへと手を伸ばした瞬間、通話の着信が知らされた。
「亜由美は眠たいとキャラ変するよな。あのキャラ、好き」彼と知り合って、最初の頃に言われた言葉。
だからだろうか、いつも電話は狙って深夜だ。
「はい……」
辛うじて、腕が動いた。
「…………………………オレ」
聞き覚えのない、低く陰鬱な声。違和感に、のそりと目を開けた。
「……だあれ?」
寝ぼけて間延びした言い方になってしまったけれど、危機感を起こすことができたから亜由美としては上出来だ。
「…………電話、待ってたんでしょ?」
淡々と、人を小馬鹿にするような。
いい声だな、わりと好きかも……なんて思ってしまったけど、
「アタシはぁ、祐介くんからの電話がいいのっ!」
気づけば大声が口をついていた。姉の部屋との境の壁が「どん!」と叩かれる。
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