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「……切っていぃ?」
寝ぼけ眼で隣の部屋を気にしながら、抑えた声ですぱりと言えた。
終話ボタンを押そうと、耳から離した時、
「いいか悪いかで言えば、悪い。切っちゃダメ」
何か用事でもあるのかな。
首を傾げながら、終話ではなくスピーカーボタンを押してベッドに放った。眠い体では、持っているのも一苦労。
「…………もしかして、祐介くんの友達?」
ふと、思いついた。何かやむを得ない事態があって、代理でかけて来てるんじゃ……。
「いや、ゆうすけくんなんて知らない」
「え?」
少なからず緊張していた亜由美は、反動で、普段なら使わないようなキツイ口調で問い詰めた。
「じゃあアナタは何なの!?」
「何って……メールくれたでしょ?」
暗い声に、かすかに楽しげな響きが混じる。
「好き、って言ったらさ」
………………あの、間違いメールのこと?
「わざわざ間違いだって教えてくれてありがとう」
目の前にいれば、たぶん丁寧に頭を下げて言われたセリフ。
でも、亜由美はなんだか素直に受け取れなかった。
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