1章 SMS

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「祐介くん、だっけ。電話まってたんでしょ?」 「まぁ……」  呆気にとられていると、 「じゃあ、祐介くんにふられちゃったんだ?」  とんでもない衝撃。 「ちが…………もん」  考えないようにしていたこと。目の前に突きつけられて、声がふるえた。 「こんなイイコなのに。祐介くん、最低だね」  あんたに祐介くんの何がわかる。祐介くんは優しくて、かっこよくて、アタシみたいな世間知らずにも寛容で……。  言い返したいのに、なぜか、今声を出せば嗚咽になってしまいそうで、亜由美はグッと唇を噛んでこらえた。 「オレがさ、祐介くんの代わりになってあげようか」  あんたなんかに祐介くん代わりなんて無理だよ。  心の中で言う。 「オレさ、実は今、ふられたばかりなの。正しい番号にちゃんとメールしてさ」  亜由美が応えないのをいいことに、電話の向こうの見知らぬ男は話を進めていく。 「だからオレ……死のうと思ってたんだ。もしこの電話に誰も出なければ」 「え!?」  ゴシゴシと枕で涙を拭いていた亜由美は、ガバリと顔を上げ、すぐそこに投げ出され、ほのかな光を放っているスマホを見た。この向こうに、一体誰がいるんだろう。やっと本気で気になった。 「ウソだと思ってるでしょ」  その自嘲気味な笑いは知ってる。ついさっき、亜由美の頬に浮かんだものだ。 「ウソじゃない。だって生きてる意味ないし。  まぁ、賭はオレの負け。電話に出たから、生きるしかない」
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