初詣

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初詣

 初詣に行った。  参道がすでに大混雑していて、境内は程遠い。それでも少しずつ人波は流れ、ようやく神社の敷地内に入ろうかという所で、ふいに頭の中に声が響いた。 『初詣、初詣って浮かれてるけど、詣自体一年一度、二度は来ない奴ばかりだろ。二回目以降もきちんと来てから『初』ってつけやがれ。  あー。しかも、小銭の一枚、二枚でどれだけ頼み事してくるんだか。やってらんねーーー』  何だ、今の?  きょろきょろと辺りを見回すが、何かを叫んでいる人物などいやしない。というか、今のが聞こえたという様子の人もいない。  あまりにはっきり聞こえたけど、俺の気のせいか?  新年早々、あんな幻聴を聞くなんて…と思いながら、もう一度だけ辺りを見回したら、門の手前に設置されている狛犬…いや、ここは犬じゃなく、祀られているのは狐だから、お稲荷さんと目が合った。  間違いなく石像だ。なのにこっちを睨んでいる。今のぼやきが聞こえただろという表情をしている…ように見える。 「夏頃、また、お参りに来ます」  反射でそう口にしたら、睨む瞳が和らいだ気がした。  そしてその後、また脳内に、『コーン』と了承の合図のような鳴き声が響いた。 初詣…完
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