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「彩芽さん、お話は聞いているのよ。あなたをあの子は買ったと言い張っているけれど、実際には違うのよ。あの子は満月の夜に父親と一緒に歩いているあなたを見て一目惚れをしたのよ。どうしてもあなたが欲しくて父親の弱みに付け込んでしまったけれど。あなたの事を本気であの子は愛しているの。それだけは分かってあげてほしいの」その顔は母親の子を想う顔だった。
彩芽は良美の月の下で父親と歩いていたところを見たと言うのには、覚えがあった。
一度だけ、満月の夜に父親と並んで歩いたことがあった。
しかし、その時は、私はまだ、高校1年生だったはず。
あれから、何年の年月が流れている事か。
では鬼頭はあのころから、ずーと私を好きだったと言うの。
本当にそうなのだろうか。
彩芽は確かめたくなった。
披露宴が終わると、鬼頭は彩芽を連れて部屋へと戻る。
部屋に着くと着物を脱がせて彩芽を抱いていく。
彩芽もそれを期待するようになっていた。
しかし、彩芽は裸になった時に鬼頭の腕の中からするりとすり抜けて窓際に歩いていく。
窓の外には青白く輝く満月が輝いていた。
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