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だがその時、若い男に彩芽は腕を掴まれて引き戻される。
「だから、夜の一人歩きは危ないから、私が送ると言っているのだが、遅らせてはもらえないだろうか」男の顔からは真剣さが出ていた。
それでも彩芽は、若い男の手を振り払って帰ろうとしたのだが、男の華奢に見える体からは想像もできないほど力強い力で掴まれており男の手を振り払う事は出来なかった。
「やめて、離してください。私は大丈夫ですから離して」と言うが離してもらえず、そのまま若い男に黒いベンツの車の中に連れ込まれてしまった。
中年の男たちは車の前の席に乗り込む。
若い男は彩芽を後ろの席に載せて自分も彩芽の隣に座る。
彩芽は、自分の身の上に起きていること、それが信じられなかった。
何故、自分がこの若い男に無理やり家に送られなければならないのか分からなかった。
若い男は何も話さずに黙ったまま前を見つめていた。
前の座席に座っている男たちも何も話さない。
車の中は静かで車のエンジンの音だけが響いていた。
彩芽は暴れることなく黙っていた。
若い男が送ってくれると言うのなら、今はそれに従おうと思っていた。
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