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「私もずっと好きだったんだ。でも、嫌われてると思ってた」
思わず流れ落ちた涙と共に、溢れた言葉。
「なっ、嫌ってなんて無いっ!好きだ!」
慌てて叫んで、私の涙を拭う叶。
どうしよう、嬉しすぎる。
そしてまた、叶の唇が降ってきた。
と。
「あなた達、何やってるのかしら?」
聞き覚えのある声が洗面所の入口から聞こえてきた。
「「あ」」
固まる私達を引き剥がすと、お母さんは私を新しいバスタオルで包んで、着替えていらっしゃい、と私だけ送り出した。
部屋に戻って服を着る。
ふぅ、きっと心配して帰ってきてくれたんだ。
それが嬉しいけど、残念でもあった。
あのまま2人きりだったら、私は叶のものになれただろうか、と。
下に降りると、リビングにはお母さんが1人でソファーに座っていた。
「叶は?」
思わず尋ねると、トイレを指した。
あ。
お母さんの視線が私の手首に向く。
そして薬箱を取り出すと、此方にいらっしゃい、と微笑んだ。
手首の手当てをして貰いながら、怖かったわね、と言われる。
頷くと、叶は怖く無かった?と聞かれた。
それにも頷くと、フフッと笑うお母さん。
「あら、じゃあ、お邪魔だったわねー」
そう言いながらも、簡単に身を預けちゃ駄目よー、なんて言って私の頭を撫でた。
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