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取り敢えず、お母さんの言葉はスルーして、私はご飯が炊けているのを確認して、お握りを握った。
叶の部屋に行き、ノックする。
はい、と声が聞こえてドアを開けると、叶は英語の勉強をしていた。
おお、本当に単純だ。
「夕飯、食べてないよね?」
お握りとお茶を教科書の横に置くと、あ、と声を上げた。
有り難う、と、お握りを頬張る叶に尋ねてみる。
「一緒に留学してくれるの?」
ぐ、と詰まった叶は、苦しそうにして、お茶で流し込んだ。
「はぁ、……だって、折角、両想いになったのにさ、離ればなれなんて、嫌じゃん」
赤い顔でそっぽを向く叶に、私が言えた事じゃ無いけど、と前置きして。
「今から進路を変えたら、担任の小城(おぎ)っちに泣かれるよ?」
そう言うと。
「それでも、慧と一緒に行く」
そう言って、顔を近付けてくる。
そのまま重なった唇に、なら、と思う。
何がなんでも、一緒に合格出来る様に頑張ろう。
「一緒に勉強しようか」
そう言うと。
「嬉しいけど理性が持つかわからない」
ポツリと呟いた叶。
「一緒に合格したら、向こうで一緒に暮らせるね」
そう言うと。
「死ぬ気で頑張ります」
叶は教科書に向き合った。
んー、単純?
でもそんな君と、これから先もずっと、また肩を並べて朝顔を眺めたいな。
君もそう思ってくれるかな?
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