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「知ってたよ、そのくらい」
りかが少しだけ笑った。
なんだ知ってたんだね…
再会してもっと好きになった。
りかの笑い顔に心が軽くなる。
寒河江さんがどんなにりかを好きだったのか知っていたから、この恋はりかに知られてはいけないと思ってた。
「ごめんね、恵。わたしに気をつかってたんだよね?でも、わたしは寒河江さんを大切な友達って思ってるし寒河江さんだってそう思ってる。今は寒河江さんの中にちゃんとひとりの女性がいるから…」
ズキッ
わたしじゃない、女性。
あの雨の中でキスしてたひと…
「ねえ、恵。熱が下がって退院したら、恵に会いたいって人がいるから会ってくれる?」
「わたしに?」
戸惑う。
突然言われて混乱した。
だけど、もう寒河江さんのこと諦めなきゃいけない時なのかもしれない。
「わかった…」
身分違いの恋だった。
どんなに身近に感じても本当は遠い存在だった。
りかに言われるまま、頷いていた―――
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