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そこから先は、なんだか地面から浮いているような感覚だった。
くすぐったいような感覚が身体中を走り回っていて、いつもより動悸が激しくて、息ができない。
そんな感覚。
自転車にまたがりコンビニを飛び出して、走り慣れた通学路を走る。
約束の時間までまだあるのに、どうしてか急ぐ自分を止められずペダルを漕いだ。
コンビニについたときには寒くてかじかんでいた手のひらが、やけに熱い。
でも、それ以上に耳が熱い。
お姉さんが綺麗だったから。
綺麗なお姉さんが笑ったから。
綺麗なお姉さんに良いことできたから。
綺麗なお姉さんが感謝してくれたから。
いろいろ考えるけど、どれもしっくりこない。
どうして自分の耳が熱いのか、はかれない。
でもひとつ、はっきりしていること。
俺を誘ってくれたお姉さんは綺麗な人で、それを俺は意識していると言うこと。
どのクラスメイトよりも綺麗で庇護欲をそそられる彼女に、どこか惹かれている。
10分の距離が長い。
早くもう一度会いたい。
つまらない日常の中に現れた異変が嬉しい。
長い10分が終わり、家についた。
自転車をガレージに押込み、玄関にまわる。
父の乗用車はない。
手を掛けたドアノブはガチッと鈍い音を立て、それ以上回らなかった。
どうやら母もいないらしい。
慣れた日常だが、今日はなんだか安心した。
見ず知らずの女性と出かける事が、何処か後ろめたかったからかもしれない。
キーを使い、家に入る。
12月のどっしりした冷気が横たわっていた。
ここは寒い。
はやくエアコンをつけなければ。
服を着替えようとして、はたと考える。
男友達と遊ぶ訳じゃない。シャワー位浴びるべきなのだろうか。
高校のクラスメイトとご飯にいった時には、別段シャワーを浴びたりしなかった。
しかしその時はどうだろう。
なんでだか、自分の匂いが気になってしまった。
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