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エアコンをとめ、財布と鍵をもって出かける。
スニーカーに片足を突っ込んで、また考え、ブーツに履き替えた。
今年の頭にお年玉で買った、ちょっと背伸びしたブーツ。
約一年前よりは履きこなせているとは思うが、彼女はどうみるのか。
まぁいいか。あまり迷うと時間に苦しくなる。
硬い生地を引っ張りながら、無理に足を押し込んだ。
何故か玄関を出る一瞬、深呼吸をした。
よし、行こう。
ドキドキする胸が苦しい。
施錠する手が震える。
待ち合わせに指定した小さな商店までは、3分程。小走りでいけば、あっという間についてしまう。
急ぐ程時間には困っていなかったが、それでも少し走ってしまったのは、単に心の問題だった。
動悸が激しすぎて、落ち着いて歩いてなどいられなかったからだ。
あっという間にたどり着いた商店の駐車場に、まだ彼女の姿はなかった。
駐車場の隅の自動販売機にもたれ、なんとなくスマホを開く。
友達からの何気ないトークや、お気に入りのゲームのイベントのお知らせ、エロ動画サイトの新着案内。
お知らせの類いは削除して、トークには返信する。
いつもと同じ事をしながら、内心は平静ではなかった。
エロ動画サイトの新着情報をみれば、【歳上】【OL】なんて言葉が目につくし、トークに返信する間は、コイツらとは違う体験をしてるんだなと感慨深くなる。
もしも。
もしも今日の食事が楽しく終わって、ブラヒモでも太ももでもチラッとみえたら、学校で自慢しよう。
綺麗なお姉さんにご飯に誘われて、ラッキースケベを体験しましたぁ!!羨ましいだろー?
そう、笑おう。
で、いい思いでにしとこう。
スマホから顔をあげると、丁度一台の車が駐車場に入ってきた。
ワインレッドのセダン。
どんな人が乗るんだろうかと見つめていると、運転席から先程の女性がおりてきた。
紺色のワンピースに、白いコート。高いヒールがコツコツと音を立てる。
大人っぽくなろうとしていた自分が馬鹿らしく思えるほど、彼女は本当に大人だった。
「遅くなってごめんねー!助手席に乗って」
化粧を直して微笑む顔は先程の数倍綺麗で、なんだか圧倒された。
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