いち

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「参加するから来てるっての」 「分かってんだろ。おまえ」 臭っ 自慢の胸を突き出し歩く美和の、咳き込みそうな香水の移り香を身に纏った鉄平から 顔を背けた 「美和の気を惹きたいからって、イケメンの兄貴を餌に持ち出すなよ」 はい~~~? マジで言ってんの、コイツ 三年になって茶髪を黒に染め、受験が終わると同時に茶髪に染め戻した鉄平の顔を、マジマジと観察して 「ケホッ、コホッ」 香水の匂いを吸い込んでしまった 間抜けではあるけど、背に腹は代えられない 手で、しっかり鼻を押さえ 「当たり前だろう」 呆れを表現した自分の声に、ちょっと不満 聞き惚れそうな兄と父のバリトンと違い、母親似の僕は声が高い バリトンまでは無理でも・・・・・・ 鉄平のアホ面を見据えた僕は、喉を絞り、意識して低い声を出した 「お前こそ頼むぜ。あの女、ちょろちょろして鬱陶しいから手綱引いてろ」 「おい、人の女を尻軽みてぇな言い方するなよ」 舌を打ち、目を尖らせた鉄平が僕に肩を寄せてくる 重なる腕から 普段の弱腰は演技かと、疑いたくなる筋力が伝わってきた いや? コイツのことだ 相手によって態度を変えてるに違いない ってことは、僕に対しては強気に出れると判断したってことだ あ、何か腹立つ めちゃくちゃ気分悪い でも、船に同乗しなければならない状況を考えると、挑発にのるのは良策とは思えない やーめた いけ好かない男との会話を切り上げ、鉄平に背を向けた 「ちょっと待て、薫。おまえなにシカトしてくれてんの」 あー、やだ、しつこい
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